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初代『スパイダーマン』シリーズに救われたこと|感想と救われポイント|ヒーローとは何か。ヒーローに個人の幸せはあるか。

初代『スパイダーマン』シリーズ

こんにちは。まおです。
今日も今日とて生きるのは大変です。それでも生きていくしかないから。そのための、いい夢を✿

今日は、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を観て初代の『スパイダーマン』シリーズを観返して救われた話をまとめてみたいと思います。

この夢(シリーズ)に救われる人:
・”ヒーロー”に憧れる人
・自分を犠牲にして何かを守る、誰かのためになる行為に憧れる人
・善人であることを損に感じて生き苦しい人

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作品あらまし

初代『スパイダーマン』シリーズってこんな話
  • 冴えない高校生のピーター・パーカーが、遺伝子操作によって生まれた「スーパースパイダー」に噛まれ、超人的なクモの能力を得てヒーロー活動を行うシリーズ作品。
  • 登場人物同士のすれ違いを描くのがとてもうまいです。
    ピーターとベンおじさん、ピーターとヒロインのMJ、ピーターと親友のハリー、ハリーとその父ノーマン、など、親しかったり大切に想っているはずの人物たちが、互いを理解し合えず傷つけ合ってしまうドラマが◎
  • 元々一般人(それも高校生)のピーターが、街や人を守るヒーローとしての責任と、個人としての幸せの間でどう行動すべきか葛藤しながら成長していきます。3代にわたる『スパイダーマン』シリーズの中で最初から最後まで「ヒーローはいかにあるべきか?」という問いに答えを出そうとし続けます。
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感想と救われポイント ~闇に堕ちるのは簡単だから、こそ。~

前提として ~3代の共通点について~

3代続く『スパイダーマン』シリーズですが、僕はこの初代が一番好きです。

もちろん、それぞれの代それぞれに良さはありますし、撮影技術や映像技術は進歩していきますから、いわゆる映像体験としての満足度は、一般的に3代目シリーズの方が高くなるだろうなとは思います。

なんですが。なんですけど。僕はどうしても、

救われたいっ!

って思いで映画も観ているので、ドラマ部分に美しいシーンや考えさせられる要素がある方が思い入れが起こりがちです。

で、それで言うとこの初代シリーズはもうとにかく、

超・ド真ん中の王道”ヒーロー”映画

をやってるのが、僕にはたまらなく救われるんですね…。

初代シリーズだけでなく、これまでの『スパイダーマン』シリーズ全てに共通して言われる重要な台詞に、

With great power comes great responsibility.
大いなる力には、大いなる責任が伴う

opensubtitles.orgより

というものがありますが、この「責任とはどんなものか」、そしてそれを「どのように引き受けるのか」という問題に、初代ピーターは突き当り続けます。

スパイダーマンの超人的な力を手に入れたピーターは、最初は自分が人と違った力を手にしたことに浮かれます。
(これはまあ3代とも大体同じ。)

その後、一時の感情ないし私欲を優先したことにより、ベンおじさんないしメイおばさんというかけがえのない人を失います。
(これもざっくり言えば3人とも同じ。)

その大事な人が、それぞれ亡くなる直前に上記の言葉をピーターに残していきます。
それを受けて、哀悼と後悔の悲しみに暮れながらも、自分が授かった力を”正しく”世のために行使することを決意するわけです。

と、ここまでは、どのシリーズにも共通した、ある種”シリーズお約束の流れ”と言えます。

『スパイダーマン』シリーズでは今見たように、「シリーズに共通する部分」がわりとはっきり存在します。
同じコミックを原作にしているから当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、
シリーズが重ねられていく中で後続の監督たちがリスペクトをもって「なぞった」部分もあると思いますし、
もちろんその中でも微妙に違っていることもあって、その「同じ」と「違い」を比較しながら観れるのも、
『スパイダーマン』シリーズが全体として楽しめるポイントだと思います♪

「1」 ~力を持った者が背負うべき「責任」~

ここから、初代シリーズの話にフォーカスしていきますが、
そんな中この初代ピーターは「1」の最後で、敵を倒した後、幼少期から隣に住んでいる憧れのMJから告白をされます。
ピーターは自身がスパイダーマンであることを隠しながらMJと関わってきたわけですが、

私が敵に捕まって死にそうになった時、心に浮かんだのは、想ってた人(スパイダーマン)じゃなくて、あなた(ピーター)だったわ。

当然、ピーター的にはウハウハ、最高の瞬間ですよね。

言い忘れてましたが、主人公のピーター・パーカーは前提として、もともと「冴えない高校生」です。
(その”のび太”感も初代のトビー・マグワイアが一番あって、そこも僕が初代が好きな理由の一つです。)

しかもこれまではMJは自分を救ったヒーローの「スパイダーマンが好きかも」と言っていたのに、個人としての自分(=ピーター・パーカー)の方を選んでくれたのだから、尚のことだと思います。

それでもピーターは、

僕はいつでも君のそばにいる。君のことを守る。
約束する。ずっと僕は君の”友だち”だ。

と、MJの「I love you so much, Peter.」には応えようとしません。
「ただの友だち?」とMJにそこまで言わせても、

That’s all I have to give.
それしか言えない。

opensubtitles.orgより

と答えます。

うあああぁぁぁ…。”ヒーロー”やなぁ…

と、思います。
個人としては、もちろん「I love you too, MJ.」と言ってMJを抱きしめたいはず。
実際ナレーションで、

All I wanted was to tell her how much I loved her.
どれほど愛してると言いたかったか…

opensubtitles.orgより

とピーターの心の声が述べられます。
だけど、

僕は”ヒーロー”だから。
”ピーターとして”君を幸せにすることはできない。

ヒーローとして、大いなる力を背負った人間としての「責任」を全うしようとします。

This is my gift. My curse.

僕に与えられた力は、僕を呪い続ける

opensubtitles.orgより

ここがまお的救われポイントなんですよねー…。

人が羨むような「大いなる力」は、それを正しく行使しようとすると、持つ者を縛りつける「呪い」になる。

その「呪い」を引き受けることが「責任」なのだと。

えええぇ…つらい…

え、そんなん、誰得?。そんなら誰も力なんて持ちたくなくなるよ…。

と、思ってしまうと思うんですけど。ぶっちゃけて言ってしまえば、ピーターだって思うんですね。
それが「2」の主題になってきます。

「2」 ~ヒーローに個人としての幸せは本当にないの?~

「2」で、ピーターは一度スパイダーマンの力を失いかけ、実際にコスチュームを捨てスパイダーマンを廃業します。

愛するMJを自分のヒーロー業に巻き込まないように遠ざけながら黙々とスパイダーマンをするピーターですが、街を救っていてMJの舞台(MJは舞台女優をやっています)は観逃し、それを責められても「犯罪者を捕まえていたから」と弁明もできず、次第にMJとの関係はこじれ、MJはついに別の男と婚約をしてしまいます。

ここにきてピーターはクモの糸が手首からでなくなり、壁も登れなくなってしまいます。

病院で診療を受けると、

身体に問題はない。心の喪失が一番つらい。ほかに道はある。

といったようなことを言われます。

心の喪失。

ここに、ヒーローの難しさが現れていると思います。

ヒーローだって人間です。

いくら”超”人的な力を得て、それを正しく使うように正義をもって努めると言ったって、それをコントロールするのは一人の人間の心です。

みんなの前では社会のため、虐げられた者たちの「希望」を体現していても、本当は嫌なことだってあれば、個人として叶えたい生活だってある。

いくら自己犠牲/無償の献身/滅私奉公がヒーローの条件と言ったって、どこまで「滅私」するのか?
ヒーローは個人の人間として幸せになってはいけないのか?

一人の人間としての幸せが微塵もないのなら、もう頑張る意欲だって湧かない。
人は木石ではないのだから。
ただでさえ、ヒーローは誰よりも前に立って傷つき、闘っているのだから。

この辺が、SF設定をベースにしたフィクションでありながら、人間ドラマとしてリアルなところだなあと思うんです。

結局、ピーターはメイおばさんの家に出入りしてる近所の子どもが「スパイダーマンを待ち望んでいる」ということを知って、そしてメイおばさんに「誰の心の中にもヒーローはいる」と諭されて、再度スパイダーマンとして闘うことを誓います。
(ここでのメイおばさんの発言は重要なので、後ほどまた引用します。)

そしてヴィラン(敵)との戦いの中で、MJに自らがスパイダーマンと知られ、MJが

危険なことは分かってる。でも、あなたと一緒に立ち向かうわ。

と決意することで、二人の関係はまた近づくことになります。

  • 愛する人に、自分がヒーローだと知られること
  • 愛する人が、自分がヒーローだと知った上で、それを一緒に引き受けようとすること

この二点が、SDGsじゃないですけど、ヒーローが「自己犠牲を伴いながら人を救けていく」活動を「持続的に」行っていく上では重要になってくるのかもしれません。

「3」 ~悪は正義よりたやすく、そして甘い~

そしていよいよシリーズ最終作に入るわけですが。

ここでのテーマは、

強大なパワーを、悪に染まらずに正しく使い続けることはできるか

ということに尽きると思います。

この「3」では地球外生命体のヴェノム(黒いスライム)が、ピーターのスパイダーマンコスチュームに気づかぬうちに染み込み(憑りつき?)、ピーターの中の「悪=攻撃性」を増長します。

ちょうどこの前後、ピーターはMJに振られたり(そこには敵となった親友ハリーの策略があったりしますがピーターは気づかず)、カメラマンの仕事を後から入ってきた男に横取りされたりしている。

そのフラストレーションからピーターは、半ば力を持った慢心、半ば自暴自棄によって、ヴェノムの憑いたスーツ(ブラック・スパイダーマン)の快感に身を委ねていくことになります。

カメラマンのエディに対しては彼の嘆願を無視して姑息な仕事ぶりを暴き、新聞社から失脚させる。
元恋人となったMJの働く店にエディの元恋人のグウェンを誘って入り、そこで当てつけのようなパフォーマンスをする。

シンプルに言ってしまえば、「闇堕ち」ですね。

そしてこのヴェノムが象徴する「悪」と足並みを揃えてやってくるのが、「復讐」の問題です。

ピーターの敬愛するベンおじさんは「1」で車強盗に遭って、抵抗の最中に拳銃で撃たれて亡くなってしまうんですが、この強盗犯の一人が脱獄してサンドマンという別のヴィランになったと知り、ピーターはスパイダーマンの力と匿名性を借りて私刑を試みます。

しかしそれを諭すのが、ここでもまた残されたメイおばさん。

生涯の伴侶を殺され、ピーター以上に傷つき、憤っていてもおかしくないメイおばさんに、

復讐心は毒。人を蝕んで、本人が気づかぬうちに醜いものに変えてしまう。

という言葉を聞いて、自分の行いを顧みます。

結果、ピーターは「復讐心」の憑き物を落とし、店でMJに手をあげてしまった後悔も相まって、ヴェノムの呪縛から逃れることに成功します。

一方、ヴェノムの次の宿主となったカメラマンのエディは、失脚させられた(恋人まで失わされたと被害妄想している)ピーターへの復讐を、最後までやめることができません。

結果、ピーターは宿主を通じて人に危害を加える危険なヴェノムを討伐しますが、この過程でエディは死んでしまいます。

物語のラスト、ピーターはベンおじさんを「誤って」殺してしまったと告白するマルコ(サンドマン)に赦しを与えます。

この一連の展開の中で分かることは、

悪に染まるのは簡単。そして悪には快感が伴う。

復讐に最後まで憑りつかれた人間は、身を滅ぼす。

ということだと思います。

「人を呪わば穴二つ」なんて言いますけど、正にそれですね。

そんな大昔(いつからあるか知りませんが…きっとそれなりに昔だろう、うん)からあるような格言、真っ向から言われたら鼻で笑ってしまいそうな言い古された表現は、でも、真実だから、普遍的だから残っていること。

この、「赦す」ということが如何に難しいか…。

一方で同じく大昔の格言(というか法典の罰則ですが)に「目には目を、歯には歯を」という言葉だってあるわけです。

自分が受けた痛みを相手にも与えたい。それでこそ相手だって反省するというもの。
どうして、わたしだけが泣き寝入りしなければならないのか…。

「赦す」ことは、「復讐する」ことよりはるかに苦痛を伴います。

これは、善と悪の関係にも同じことが言えます。

  • 善(ヒーロー活動)=自己を犠牲にして他を助ける。人のために自らが盾となって傷つく。
  • 悪=己の快楽や利益のために、力を使う。自分のために弱き者を搾取する。

なので、同じ「力」があれば、善を遂行する方が難しい。

これが、強大な力につきまとう二面性だし、だからこそ、”正しく”行使することが「責任」として求められる。

「闇堕ち」なんて言葉が流行るのも、それが悪の方が「陥りやすい」からだと思いますよね。
だって、「善昇り」なんて言葉聞かないですものね。

人はみんながみんなそんなに強いわけじゃない。
だから、ささいなきっかけで、道が2つに分かれていたら闇を、悪を、選んでしまいがち。だからこそ。

人々の道標となるように、難しくても理想としたい姿を、いつでも思い起こせるように。

”ヒーロー”という象徴が、人には必要なのだと、思いました。

最後に、スパイダーマンをやめかけていたピーターにメイおばさんがかけた言葉を引用して、終わりたいと思います。

I believe there’s a hero in all of us

that keeps us honest, gives us strength, makes us noble,

and finally allows us to die with proud.

誰の中にもヒーローはいる。

だから正直に勇気を持って、気高く生きられる。そして最後は誇りを持って死ねる。

opensubtitles.orgより

コンテンツ紹介 ~あさき夢見ばや~

いかがでしたでしょうか。

うーん。少し長くなってしまいましたかね。

ほんとは、親友ハリーとのすれ違いの歴史とか、MJとの近づいたり離れたりの関係とか、ドラマとしておすすめしたいポイントもたくさんあるんですけどね…。

「正義」や「善」というのは、誰もがそうありたいと思っている(思っていてほしい)はずだし、そんなの当たり前とすら思っている。

けど、その実現はとてもとても困難で、だからこそ、それを迷ったり間違ったり傷ついたりしながら目指そうとしているヒーローの姿は本当に救われます。

善と悪は、何も物理的な暴力だけの話じゃない。

「政治」で、「経済」で、「社会」で、利己(のために人を傷つける)を働く「悪」はそこら中に蔓延っているから。
その中でただ自分ひとりが利他(益のない献身)を遂行するのは本当に本当に難しいから。

どんな境遇の人にも、SFと違い平凡な現実を生きる私たちにも、スパイダーマンは大きな救いになると信じてます✿

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『スパイダーマン』シリーズは、公開中の「ノー・ウェイ・ホーム」にインスパイアされて何本か記事をまとめて書いているので、よろしければそちらも是非ご覧になってみてくださいっ♪

最後までお読みいただき本当にありがとうございました!
それでは、また。あさき夢の狭間にて ✿

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